八月の魔法使い/石持浅海

八月の魔法使い

石持浅海氏は、同郷出身ということもあって、私が期待しているミステリー作家の一人です。初期の作品は、登場人物の会話がどうにも鼻について、せっかくのプロットを活かしきれていませんでしたが、作を追うごとにその辺りは洗練されてきており、最近の著書は純粋に物語を楽しめるようになったと思います。

本作は、こういう表現があるのか甚だ怪しいですが、「勤め人ミステリー」だそうです。まあ、現役会社員でもある著者ならではの、サラリーマン的発想やら行動やらが、謎解きのキーになっているので、そういうジャンルで呼ぶのも良しとしましょうか。

「事件は会議室で起こっていた!」

帯の紹介文です。なんとも安直なコピーに苦笑しますが、実際に本作の事件は会議室で起きています。
あるはずのない文書が役員会議室で見つかり企画会議が中断して紛糾する。誰が、何のために・・・。同時に同じ文書が階下の総務部で見つかり、草食系サラリーマンである主人公がアームチェア・ディテクティブならぬビジネスチェア・ディテクティブとなって謎の解明に当たる、という筋書きです。
主人公の謎解きのいたるところにサラリーマン的発想が出てきて、苦笑せざるをえませんが、シニカルなのは良いのですけど、あまりに打算的すぎて今ひとつ共感できません。石持氏の一番の弱点がこの辺の人物描写力だと思うので、もう少し魅力的な主人公が描けるようになることを望みます。

良くも悪くも、会社ってそうだよね、みたいな勤め人作家ならではの視点が特徴です。ゴールに至る起承転結の結が杜撰な印象を受けるのが残念ですが、ストーリー的にはそこそこ楽しめると思います。

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