プラチナデータ/東野圭吾

プラチナデータ

東野圭吾氏の最新作です。

東野氏の著書には、近未来というかSFチックというか、ちょっとだけ設定を未来っぽくした作品がいくつもあります。
そのどれもが、現実を忠実にリアルに表現しながらも、ほんの少しだけ未来的要素を加えることで、非常にエンターテインメントとしての質が際だっています。本書もそうした一連の作品の中の一つであり、その中でも傑作と言っていいレベルだと思いました。

東野作品が今や売れに売れていて(私はデビュー当時から愛読していますが)、ドラマや映画に引っ張りだこなのは、ひとえに彼の表現力・筆力によるものだと思います。ストーリーテリングが上手く、リーダビリティがあって、人物表現が際だっているため、読者はすっかりと彼の術中に引き込まれていきます。本作も読み出したら止まらない面白さで、最後まで一気に読んでしまいました。

本作では、全ての国民のDNAが登録され、犯罪検挙率が格段に向上した世界が描かれています。東野近未来作品の肝は、こうした「さもありなん」と思える設定にあります。馬鹿馬鹿しいほど未来的であったりSFそのものであったりではなく、現実の延長線上にあってもおかしくないリアルな未来像だからこそ、ストーリーが生きてくると言えます。この空恐ろしい世界を舞台に、遺伝子と心をテーマにした作品が本作です。

芸術とは作者が意識して生み出せるものではない。その逆だ。それは作者を操り、作品としてこの世に生まれる。作者は奴隷なのだ。

本作で、陶芸家が放つ言葉ですが、著者は自らの作品についても多少なりともこういう思いを持っているのではないかと感じます。生み出すのではなく生まれるもの。結果として世の中に認められるもの、求められるもの。ベストセラー作家なりの紡ぐ思いが謙虚に凝縮しているように感じました。

本作は「容疑者Xの献身」以来の会心の出来ではないかと、私は思います。唯一、最後の部品のところだけは余計だったかな、筆が滑りすぎたかな、完璧を求めたのだろうな、と思いましたが。それはそれとして、期待を裏切らない高いレベルのミステリーに仕上がっていると思いますので、五つ星でオススメしておきます。

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