iPad VS. キンドル/西田宗千佳
ITジャーナリスト西田宗千佳氏による、電子書籍の現在についてのまとめ的一冊です。
サブタイトルは「日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」です。電子書籍とはどういうものか、米国で本格化した電子書籍ブームについて、日本での可能性と未来図など、盛りだくさんの内容になっています。さすが、iPad発表会に日本から招かれた数少ないライターの一人だけあって、深く掘り下げた内容とわかりやすい文章に仕上がっています。
ブームの火付け役となったamazonのキンドルですが、そのムーブメントの背景には、ハードの優秀さだけではなく、ソフト(eBook)のラインナップと価格、オンラインストアの使い勝手、そして何より、携帯通信機能を内蔵しながらも通信費をamazonが負担するという画期的なビジネスモデルがありました。この新たなビジネスモデルには内外の多くの事業者が一目置いており、任天堂も強い関心を持って受け止めているとのことです。DSのようなゲーム機が3G内蔵になり、ユーザーは通信であることを意識しないでその恩恵に預かれるという可能性には心躍るものがあります。新しい形のMVNOがこれからどんどん出てくるのかもしれません。amazonの狙いは、「本から得られる売上を、出来る限り大きくしていく」ことに尽きます。そして、そのためにキンドルをプライム会員に無償配布するというような噂まで出ているそうです。日本語のコンテンツが増えて、キンドルが無料で手に入るようになるという新しいステージが来ることを切に願います。
著者が1章分を当てて説明しているように、米国でeBookがビジネスになった理由はさまざまあるわけですが、それらの条件を日本にそのまま持ってくることは日本独自の再販制度や出版業界の縄張り意識から少し難しい舵取りが必要になります。それでも、日本の出版業界でも関係者は、「するか・しないか」ではなく、「どのような形でビジネスモデルに組み込むか」という段階に入っています。実際に2010年に入ってから大手の出版業界関係者が複数の電子書籍関連団体を作ってここに取り組み始めました。一番の課題である権利問題をクリアにしなければなりませんが、既に動き始めています。著者、出版、取次、書店といった垂直統合のビジネスモデルをどう変革していくのか大変興味深いものがあります。
純粋に本が好きなユーザーの一人としては、手軽に、安く、快適な読書体験ができる環境が出来ることはとても喜ばしいことです。蔵書派の私は紙の本の良さもよくわかっているので、上手に紙と電子書籍とがラインナップされて選べるようになると嬉しく思います。
「電子書籍の衝撃/佐々木俊尚」を読んで、本書を読めば、もう電子書籍に関する知識・情報はほとんど頭に入ります。電子書籍元年になると言われる今年の旬の話題ですので、一読されることをおすすめします。


