ヤフー・トピックスの作り方/奥村倫弘
ヤフー・トピックスは、検索大手ヤフーのトップページにある、8個のおすすめニュースのことです。1日3,500本以上配信されるヤフー・ニュースの中で、とびっきりの情報がピックアップされたもの、というとらえ方でいいと思います。莫大なPVを誇るヤフーの一番目にとまりやすいところに表示されるヤフー・トピックスですが、そこに書かれたリンク先への流入がとてつもなく多いことから、企業PR関係者など多くの方から注目を浴びています。
本書は、そのヤフー・トピックスの編集責任者である、ヤフー株式会社本部編集本部メディア編集部長の奥村氏による、初の内部情報が詰まった一冊です。
2009年10月現在、ヤフー・ニュースは、閲覧数を示すページビュー(PV)が月間45億、訪問者数を示すユニークユーザー(UU)は6970万を超える規模になりました。
まさに、他を寄せ付けない、日本最大級のニュース配信サービスです。
「情報が整理されて集まることで力が生まれてくるんですよ」
本書執筆日現在で最も若い編集者である伊藤氏のこの一言が、ヤフー・トピックスの神髄を表していると思います。
ヤフー・トピックスはわずか13文字の範囲内で表現されています。ヤフーのトップページの構成が現在の形になった01年から、ずっと13文字だそうです。140文字のTwitterの1/10より少ない文字数で、的確にニュースの内容を表現し、読みたいと思わせるというのは、なかなかに難しい作業だと思います。短いが故に伝わる強さみたいなものがあるように私は感じます。ともすればセンセーショナルな見出しにしてユーザーを呼び込みたいという誘惑に流れそうですが、報道とはかくあるべきという一線を奥村氏をはじめとした編集部がしっかりと持っているので、「伝わる13文字」が常に掲載されているのだと思いました。
トピックスの8本の並び順に実は基本原則があるんだそうです。グラデーションという言葉で表現されていますが、堅いものから柔らかいものへと少しずつ流れていくように表示させているのだそうです。こうすることで読む人の思考が流れるように構成されて頭が疲れないのだとか。さすが、長年の経験が生きています。こうした経験則的なことは、ロボット型では決して真似の出来ない、人の手を介したサービスならではだなと思います。大きな安心感を生みます。
また、広告がメインビジネスのヤフーが運営しているので、トピックス欄もPR目的で利用したいと考える企業も多いはずですし、ヤフー側としても高い収益が見込めると考えるはずですが、奥村氏は「トピックスの周りにいろいろな告知スペースがあるので、そこでやってください」と断るそうです。ニュースの信用と価値を失うことにつながりかねない、という理由からです。目先の収益を一義に考える新興のポータルサイトなどはこの辺が曖昧だと思いますが、ヤフーは筋が通っています。長い目でユーザーからの信用を維持することが相互の価値に繋がるという明確な論理です。
「どうすればトピックスに載るのか?」。この問いに対する答えはありませんが、「どのような情報がトピックスに掲載されるのか?」という問いに対しては、このように答えられるかもしれません。「トピックスが掲載したい情報は、読者が求める商品やサービスに加え、企業が得意とする分野に関する知識やノウハウなどです。」
新商品のリリース文の表現にこだわるよりも、自社で強みとなっている部分を継続的にユーザーに届けるようなページを続けていくことが、結果としてトピックスからリンクが貼られるような価値ある情報になるということです。本書に掲載されている事例を参考にしながら、自社で(もしくは個人で)何を発信していくべきかを問うことが求められている時代なんだと改めて感じた次第です。
報道・ニュースとは何かといった硬派な話や、注目されたトピックス事例、失敗談など面白い話も盛りだくさんでなかなか興味深く読める一冊だと思います。企業のPRをやっている方にもおすすめです。

