万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ、Ⅱ/松岡圭祐

万能鑑定士Qの事件簿 I (角川文庫)

「千里眼」シリーズの松岡圭祐氏による新たなミステリーの幕開けです。

今回の主人公は、鑑定士凛田莉子。万能鑑定士を名乗り、その卓越した知識と観察眼でどんなものでも鑑定してしまう若干23歳のスーパーヒロインです。
松岡圭祐氏の描くスーパーヒロインには、千里眼シリーズのスーパー・クール・ビューティ岬美由紀がいますが、彼女が文武両道のカリスマ的な突出した存在であるのに対し、本シリーズの莉子は博学ながらも素朴でおとなしいキャラクターという設定になっており、岬よりも少し人間的というか親近感がわきます。
とはいえ、その知識と観察力は驚愕に値するものであり、やはりスーパーウーマンであることには変わりないわけで、「ありえねぇ」シーンが多発するのは松岡シリーズの鉄板でもあります。

莉子がその類い希なる才能を備置するようになったのは、人間の記憶に関するメカニズムを教わったからなのですが、その内容自体は実にリアルなもので、松岡氏らしい蘊蓄が随所に見られます。情動が記憶のメカニズムに深い関係を有することは脳科学の分野では証明されていますが、それを高い感受性を有する莉子が実践していく件はなかなかに興味深いものがありました。

さて、本書のあらすじですが、都内を浸食していくシールの謎に始まり、国家規模の偽札事件、ハイパーインフレによる日本経済の終焉、という非常に野趣溢れる内容です。松岡ワールドここにあり、といった感じですね。細切れの章立てと小気味よいリーダビリティでどんどんページが進んでいきます。

残念ながら最後に辿り着いた「動機」に肩を落とすことになりましたが、エンターテインメントとしては面白く仕上がっていると思います。

なお、本書は角川文庫でⅠ、Ⅱの2冊で1つのストーリーが完結しますので、購入の際には2冊セットでのご購入をお忘れ無く。

Ⅲ、Ⅳも既に発売されているので、引き続き読み進めたいと思います。

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