EXIT/奈部真、勝間和代
勝間和代氏監修のビジネス小説です。
正直、あまり期待していませんでした。著者の数多ある自己啓発本に近い、人生こうあるべき、みたいな部分が出ているのではないかと危惧したからです。それでも手にとってみたのは、本書が「小説」であるからでした。ノンフィクションの世界で、勝間氏がどれだけエンターテインメント性を発揮できるのか(そもそも彼女自身がメディア界ではひとつのエンターテインメント的役割を果たしていることはさておき)を検証してみたかったのです。
結論からいうと、予想以上の面白さで、しっかりビジネス小説として成立していると思いました。著者である奈部真氏の文章力が効いているからでしょうか。決して、香ばしくも、くどくもなくて、さらっとした仕上がりで読後感も良い良質の小説になっていると感じました。
主人公は29歳のキャリアウーマン。MBAホルダーで、容姿も良く、それでいながら熱い心を持ち、時に弱いところも見せる、魅力的なキャラクターです。
本作は、彼女が外資系PEFが出資する、PHSキャリア「リテア」に執行役員経営企画部長として転職(PEFから出向)し、プライシング戦略とプロダクト戦略を立案、実行し、コスト削減とトップライン上昇とを成功させた上で、PEFのエグジットまで持って行く、というストーリーです。戦略系とM&A系の用語がたくさん出てきますが、上手に文章内でわかりやすく説明されており、読んでいて疲れるようなことはありません。小説ですので、個別具体的な手法については書かれていませんが、事業戦略を考えるヒントはたくさん散りばめられており、楽しみながらフレームワークの基礎がなんとなく頭に入る、という内容でした。
小説の舞台となる携帯電話業界ですが、実際の事実が名前を変えてたくさん登場しており、昔携帯販売会社にいた自分にとってはとても馴染みのある世界観であったことも面白く感じた一因だったと思います。クラサワの倒産、販売奨励金の見直し、音声定額プラン、など、業界内に身をおいた者にはとても興味深く読めました。一般の方々=携帯ユーザーにとっても、実話を織り込んだこの舞台設定は十分に面白さを感じるだろうと思います。ケータイが手放せない世代の方には是非読んでみていただきたいと思います。
なお、本書ですが、初めて電子書籍版を購入し、初めてiPhoneで小説を読みました。一部動作が重くページめくりがうまくいかなことや、文章の一部に変な空白が入っていたりしましたが、概ねストレスなく読みきれました。個人的にはやはり書籍という形の方が読みやすいなと思いますが、いつでも手元にあるので細切れの時間を使って読むことができる電子書籍も悪くないなという感想です。
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