電子書籍の衝撃/佐々木俊尚

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

書評ブログをわざわざ起ち上げているくらい、私も本が好きです。著者佐々木俊尚氏と同様に、年間100冊以上は本を読みます。
そんな読書好きの私にとっても、読書の未来に繋がる電子書籍の動向は、とても気になるものでした。本書は、そんな私の憂慮や期待に対して、的確なメッセージを伝えてくれました。

佐々木氏の著書は何冊か読んでいますが、毎度ながら、簡潔明瞭な文体と的確な例示との小気味よいバランスでサクサクとページが進み、サクサクと脳に入ってくる感覚があります。とてもわかりやすいのです。

さて、本書ですが、キンドル、iPadに代表される電子ブックリーダーの登場と、それを取り巻く電子書籍の流通、そして書き手と読者との関係性まで、余すことなくその変化の潮流と期待される未来が書かれています。

まえがきには、こうあります。

電子ブックが紙の本にかわる、あるいは紙の本を補完する社会のインフラとして定着していくためには、(中略)電子ブックを取り巻く生態系が形成されていかなければなりません。
(中略)
第一に、電子ブックを読むのに適した機器(デバイス)が普及してくること。
第二に、本を購入し、読むための最適化されたプラットフォームが出現してくること。
第三に、有名作家か無名のアマチュアかという属性が剥ぎ取られ、本がフラット化していくこと。
第四に、電子ブックと読者が素晴らしい出会いの機会をもたらす新しいマッチングモデルが構築されてくること。

iPadの発売により、デバイスの急速な普及が今まさに始まっています。そして同時にキンドルストアやiBooksといったプラットフォーム戦争が勃発しています。まだパブリッシングのフラット化は始まっていません。新たなマッチングモデル、それは、ソーシャルメディアになると思いますが、これもこれからです。しかし、これらの変化は確実に進んでおり、そしてデバイスの普及がこれらの変化を加速度的に進ませるだろうと想像します。

フラット化については、著者が本書内で引用しているブライアン・イーノというミュージシャンの言葉がとても印象的です(彼は音楽について語っていますが、これは本の未来についても同意であると思います)。

「もはや音楽に歴史というものはないと思う。つまり、すべてが現在に属している。これはデジタル化がもたらした結果のひとつで、すべての人がすべてを所有できるようになった。」

一頃流行ったロングテールという言葉でも表装されるように、電子化によって膨大な在庫が可能になり、検索という技術が後押しすることで、コンテンツに時代という概念が消失し、すべてのコンテンツが今手元にある、ということです。この変化に伴って、自分の欲しいものを探すためのマッチングシステムが求められるようになってきており、それはおそらくソーシャルメディアという枠組みの中で生まれてくるだろうと著者も語っています。

硬直化した出版業界がこの変化にどう対応していくのかは注目に値しますが、著者は次のように述べています。

最も大切なのは、
「読者と優秀な書き手にとっての最良の読書空間を作ること」
です。
(中略)
出版業界の(中略)この不幸な事態を、ついに登場した電子ブックが突破してくれる-いまやそういう期待が高まっているのです。

新たな生態系が生まれつつあります。その中で私たちの愛する「読書」がどう変わっていくのか、とても刺激的な未来だと思います。

電子書籍について、ひいては読書の未来についての、変化と希望と期待とを、その背景から将来分析まで的確にまとめあげた本書は、本が好きな方にとっては特に面白く感じられると思います。

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