成功は一日で捨て去れ/柳井正
尊敬してやまない経営者の一人であるユニクロの柳井正社長による経営哲学実践の記録です。ちなみに他に私が尊敬する経営者は、松下幸之助さん、小倉昌男さん、稲森和夫さんなどです。どの方もベンチャースピリッツに溢れ、独自の経営手法でグローバルな成長を持続させ、さらに企業が社会的公器であることについても確たる信念を持って社会貢献を行っている、日本が誇る経営者であると私は思っています。
さて、本書は、2003年に出版された前作「一勝九敗」の続編でもあり、2003年から刊行時2009年10月までの、激動の6年間を振り返ったものとなっています。フリースブームが終わりユニクロブーム終焉と言われてから、「唯一の勝ち組」とさえ呼ばれるようになった現在までの戦いの記録です。
柳井氏は前書きでこう述べています。
金融破綻の先触れとなったリーマンショック以降、世界中の多くの小売業の業績が低迷するなか、ユニクロの業績はある程度好調を持続してきた。それは決して「一人勝ち」と呼べるような成功ではなく、まだまだまったくの未完成であり、今現在も日々悪戦苦闘している最中である。成功などほど遠い、と思っている。
この飽くなき現状否定と改革への挑戦こそが、現在の、これまでの、そして未来の、ユニクロ快進撃の根本にあるといっていいと思います。
「成功」は、そう呼ばれた瞬間から陳腐化していくものである。経営環境が絶えず変化しているので、人真似の考え方や方法、あるいは他人任せという安易な手法を繰り返すだけでは絶対に成功などしない。自他共に成功事例の復習は、無意味なのだ。(中略)ちょっとした成功は満足に通じ、満足はやがて安定志向につながる。あらかじめ計画する安定成長などありえない。さらに大きな本当の成功に向かって経営者自らが手足を動かし、もがき、挑戦し続けなければ安定成長すらおぼつかないだろう。(中略)会社というものは、何も努力しなければつぶれるもの。常に「正常な危機感」をもって経営しなくてはいけない。会社を成長発展させようと考えたら、「現状満足」は愚の骨頂だ。現状を否定し、常に改革し続けなければならない。それができない会社は死を待つだけである。
非常にストイックな考え方ですが、このくらい真剣に会社の成長を考えて日々行動しなければ現代社会で企業が生存していくことは困難なのだと改めて感じ入った次第です。
時系列でのファーストリテイリンググループの発展と失敗の記録とそれに対して柳井氏が打った対応、そして2004年から2008年までの年頭の全社向けメールの抜粋とで仕上がっている本著は、ありがちな店舗写真やロゴの掲載、新聞記事等の抜粋といったものは全くなく、柳井氏の経営に通じるかのごとく潔く活字だけで編纂されています。良いなと思った箇所を引用しようかとも思ったのですが、あまりに多すぎて、というよりどこにも無駄なところがないくらい、マネジメントについて考えさせられる内容でした。経営者がここまで真剣に会社や社員、お客様に向かっている会社、それがユニクロです。小売業だけでなく、日本の先頭を走っている会社は、常にチャレンジし続けている会社なのです。その最先端の経営哲学が詰まった本書は経営者のみならず多くのビジネスマンの中に眠るスピリッツを奮わせる一冊だと言えます。
最後に、とても壮大で素晴らしいファーストリテイリンググループのミッションステートメントを紹介します。
服を変え、常識を変え、世界を変えていく
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