Another/綾辻行人

Another

名手・綾辻行人氏のホラー小説です。

綾辻行人氏は私の中では新本格の旗手であり、優れたミステリー作家です。その先入観が頭から離れず、どうしてもミステリーだとしか読めませんでした。残念ながら本作はミステリーではなくホラーであって、理屈で片付けられない現象が謎のまま終わってしまうのですが、そう思っていても何らかの論理的解決なり帰結なりがあるんじゃないかという期待のまま読了してしまい、自分の思いこみは棚に上げて不満に感じてしまいました。

ホラーであるという前提であれば(というよりも綾辻行人ではない人物、例えば鈴木光司の手による作品だと思って読めば)、エンターテインメントとして優れた作品と言えるかもしれません。原稿用紙千枚という長編大作でありながら、だれることなく、一気に最後まで読ませるリーダビリティは圧巻です。

疑問点(ホラーである現象は除いて)として唯一残るのが、舞台がなぜ1998年だったのかということ。現在であっても全く構わない内容にも関わらず、あえて1998という年を選んだ以上はそこから現在(執筆当時2006年)までの何らかの話があるのではないかと期待したのですが、残念ながらその答えはありませんでした。唯一可能性としてあるのは主人公の名字の件だけ。それだけのための1998だとするとちょっと構成が甘い気がします。

本作はホラーであって現象に理屈的説明はないという気構えで読めればそれなりに面白いと思います。

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