うつ病の脳科学/加藤忠史

著者の加藤忠史氏は、理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チーム・チームリーダーです。最新の脳科学研究を行っている氏による本書は、精神科医や心療内科医などの方による「うつ病」についての書籍とは全く内容を異にしています。
本書では、うつ病の解明に関しての最新の脳科学研究の成果を国内外問わず網羅的に紹介すると共に、社会問題にまでなっているうつ病を臨床からではなく脳科学の力でその解明と対処を行っていく必要性を訴えています。
専門的すぎる内容が多いのですが、それを差し引いても、考えさせられる内容でした。
著者は言います。
今後の研究が進むべき方向性を考えるとき、日本でもブレイン・バンクを作り、うつ病にかかったことがある方が天寿を全うされた時に、その脳を大切に保存し、病因解明に役立てることができるようにするシステムを整える必要性を強く感じている。
現在はまだこうしたものが無く、うつ病と脳の関係は推測と動物実験の結果でしか解明されておらず、そのためにうつ病患者はDSMによる面談で画一的に診察され、時間のかかる薬物治療によってしか治療を進められていないわけです。ブレイン・バンクのようなものがあって、それを使って多数の脳科学者が実際のヒト脳を使って研究し、科学的にうつ病と脳の因果関係が解明されれば、うつ病の治療は画期的な変化を遂げるかもしれないわけです。
多数の関係者の努力と関係省庁への働きかけが必要になるでしょうが、現在のうつ病の社会的負担の大きさを考えれば、是非とも実現させていただきたいことだと強く思いました。
また、この病気特有の「隠さなければ社会的に暮らせない」という一面についても、現実問題としてこれだけ多数の患者が存在し苦しんでいる現状を考え合わせ、カミングアウトしても社会に受け入れられる土壌の形成が必要だと強く感じました。がん患者や糖尿病患者が自信の病気をオープンにしても同情されることはあっても排斥されることはあまり無いのに対し、うつ病(ないし他の精神疾患)に限ってはそれをオープンにした瞬間に社会的に抹殺されかねないという現実は是正されていくべきだと私は思います。
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